桐生 祥秀
桐生 祥秀

2024パリ五輪、
2025年滋賀しがで開催される
国スポに挑戦できる
幸せと楽しさと

陸上競技の入り口となった
中学時代の部活動について
教えてください

小学生の頃はサッカーをしており、陸上競技を始めたのは中学時代から。僕には兄が一人いて、サッカーも陸上も、兄の後を追って「じゃ、僕も」と始めました。陸上部には友だちも多かったということもあります。
通っていた中学校は陸上の強豪校ではなく、地元の公立校です。部活動は小学校時代からの遊びの続きのようで楽しかったですね。友だちも一緒でしたから、しんどかったという記憶はありません。友だちとしゃべったり、ふざけたり、ときにはサボることもあり、必死に陸上に取り組むという感じではありませんでした。だからこそ毎日の部活動が楽しく、走ることも楽しくて、練習にも前向きに取り組めたのかもしれません。
当時は、走るたびに速くなっていきました。僕自身の成長のタイミングに合っていたのでしょうか。厳しくなくとも練習をきちんとすることで、記録が出るようになる。記録が出るとうれしくて、さらに走るのが楽しくなる。中学時代はずっと、その繰り返しでした。

子どもたちがスポーツに
親しむためのきっかけとは?

子どもの頃は、本当によく体を動かして遊んでいたのだと思います。友だちと遊ぶときは基本的には公園で走ったりボールで遊んだり、サッカーもしていましたし。当時は道路で遊んでいても、車もほとんど通らなかったし、怒られることもなかった。もちろん地域によって事情は異なりますし、今の子どもたちにはちょっと難しいかもしれないけれど、まずは「体を動かすのって面白いな、楽しいな」と思ってもらえるといいですね。それがスポーツへの入り口になればと、子どもたちに向けていろいろなイベントを行っています。
何か準備してチャレンジして失敗すると、次は成功するよう準備し直して、再びチャレンジする。スポーツはその繰り返しだと考えます。失敗すると、やはりすごく落ち込みますよね。でも失敗を糧に何かを学びまた準備していく。失敗はイヤだけど、僕は何度も経験してほしいと思います。失敗することは、一つ前に進むこと。失敗やチャレンジを通じて、自分の成長にどんどんつなげていけるのが、スポーツなんじゃないでしょうか。
陸上競技はたくさんあるスポーツの中の一つですが、サッカーでも野球でもバレーボールでもバスケでも、走ったり跳んだりという動きは必要ですから、すべてのスポーツに活用できる競技でもあります。まずは体を動かして遊ぶことを通じて、いろいろなスポーツにチャレンジしてくれるといいですね。

パリオリンピックを目指して
こだわりたいことは?

一昨年の日本陸上競技選手権大会のあと、昨年にかけて休養期間をいただきました。復帰してからのコンディションはまずまずです。
今年はパリオリンピックが開催されます。僕はオリンピックでも世界陸上でも、リレーでメダルを獲得しましたが、やはり100メートル個人でメダルを目指したい。100メートルを走るという意味では同じように見えますが、やはり違う。それにはもちろん自己ベスト更新が必要です。しばらく更新できていないので、メダル獲得のために、自己ベストの更新にもこだわっていきたいですね。合宿も練習も、本気で実現を目指すためのプログラムです。ほかの誰でもない、自分のためのチャレンジです。
本格的に陸上のシーズンに入るのは4、5月です。そこでしっかりとタイムを出して、パリにつなげていきたいと思います。東京オリンピックではリレーでの出場で、個人戦ではありませんでした。パリではリレーはもちろん、100メートル決勝を見据え、メダルにつなげていきたいですね。

地元開催の国スポ・障スポに
向けての想いをお聞かせください

昨年11月、彦根ひこね市の平和堂へいわどうHATOはとスタジアムでのイベントに参加しました。実は、このスタジアムの前身である県立彦根ひこね総合運動場は僕が陸上競技を始めた場所で、とても思い入れがあります。中学の陸上部の練習などで利用していて、よく自転車で通っていました。
新しくなってから訪れたのは、昨年のイベントが初めて。タータンの色が赤から青に変わっていたり、スタジアム全体を囲むようにスタンドができていたり、「こういうふうに変わったんだな」というのを見るだけでも楽しかったです。
平和堂へいわどうHATOはとスタジアムは、来年行われる「わたSHIGA輝く国スポ・障スポ」で開閉会式と陸上競技が実施されるメイン会場になるそうですね。44年ぶりの滋賀しが県開催の大会は、自分も含めてほとんどの選手にとって初めての地元開催です。とくに陸上競技の会場は、僕の地元です。海外や東京で開かれる大会とは違い、家族や友人、親戚などたくさんの知り合いに、気軽に見に来てもらえます。盛り上がってほしいし、僕も盛り上げていきたいと思います。

イベント風景
イベント風景
イベント風景

実はここ5年ぐらい国体に出場していません。でも来年の国スポには、ぜひとも参加したい。昔から僕のことを知っている人たちの前で、僕を育ててくれた地元で、思い切り走りたいし、楽しみたいです。
陸上シーズンは大体9月ぐらいまで。10月には陸上の大会はほとんどありません。そのスケジュールで身体をつくっていきます。だからいつもの年は、10月になるともう全然陸上をやる身体ではなくなっているんですね。でも来年は国スポがあります。身体づくりの予定を少し延ばそうと考えています。今から楽しみです。

PROFILE

桐生 祥秀
桐生きりゅう 祥秀よしひで
中学時代に陸上競技を始め、高校3年時に高校記録・日本ジュニア記録・日本歴代2位記録となる100m 10秒01を樹立。東洋大学進学後も各大会で活躍し、2016年リオデジャネイロオリンピック4×100mリレーで銀メダルを獲得した。翌年、大学4年生で日本学生陸上競技対校選手権大会100m決勝に出場。日本人史上初となる9秒98を樹立した。2019年、アジア選手権にて100m金メダルを、同年の世界陸上競技選手権では4×100mリレーのアジア記録を樹立し、銅メダルを獲得。2020年の日本陸上競技選手権大会にて100mで6年ぶり2度目の優勝を果たした。2024年1月にチェコで開催されたWA室内ツアーゴールドで60mの室内日本記録を更新。
2017・19 年、滋賀しが県民スポーツ大賞最高栄誉賞を受賞。
滋賀県彦根市出身 1995年12月15日生まれ
日本生命所属